太平洋の孤島、イースター島。
モアイ像で知られるこの島には、もう一つの大きな謎が残されています。
木の板に刻まれた、見たこともない文字の列——「ロンゴロンゴ」です。
100年以上研究が続けられているにもかかわらず、その内容はいまだ解読されていません。
この記事では、ロンゴロンゴ文字とは何なのか、なぜ解読できないのか、そしてなぜ多くの資料が失われてしまったのかをわかりやすく紹介します。
ロンゴロンゴ文字とは?
ロンゴロンゴ文字とは、南太平洋のイースター島(ラパ・ヌイ)で発見された、木製の板に刻まれた文字のような記号群です。
19世紀にヨーロッパ人によって発見され、現在は世界各地の博物館に、断片を含めて26点ほどが保存されています。
「ロンゴロンゴ」という名前自体、島の言葉で「詠唱」や「朗誦」といった意味を持つとされています。
そこに刻まれた記号は、人や動物、植物、幾何学模様などをかたどった、独特の形をしています。
文字の特徴
ロンゴロンゴには、他の文字体系ではあまり見られない、特徴的な書き方があります。
一行を書き終えると板を180度回転させ、次の行を逆さまの向きで書くという「逆ブストロフェドン」という方式が使われています。
このため、読み手は板を回転させながら読み進める必要があり、世界的にも非常に珍しい書字方式とされています。
記号の総数は120種類程度とも言われていますが、研究者によって分類の仕方が異なり、正確な数は定まっていません。
なぜ解読できないのか
ロンゴロンゴが解読できない最大の理由は、比較対象となる資料がほとんど残っていないことです。
未知の文字を解読する際は、既知の言語との対応関係を見つけることが手がかりになりますが、ロンゴロンゴにはそれがありません。
また、そもそもロンゴロンゴが「文章を記録する文字」なのか、それとも儀式的な詠唱を助けるための「記憶の補助記号」なのかも、はっきりとは分かっていません。
記号一つひとつが単語を表しているのか、あるいは絵として意味を伝えているのかも、意見が分かれています。
ロンゴロンゴは何のために作られたのか
ロンゴロンゴが何のために作られたのかについても、さまざまな説があります。
よく語られるのは、系図や神話、儀式で唱えられる詠唱を記録するために使われたという説です。
一方で、1770年にスペインの探検隊がイースター島を訪れ、領有を示す文書に島の人々の署名を求めたことがきっかけとなり、文字というものの存在を知った島民が独自に生み出したのではないか、という説もあります。
つまり、ロンゴロンゴは大昔からの伝統文字ではなく、ヨーロッパとの接触によって比較的新しく作られたものかもしれない、という見方です。
なぜ多くの資料が失われたのか
ロンゴロンゴの解読が難しい大きな要因は、資料そのものが極端に少ないことにあります。
19世紀後半、イースター島はキリスト教の布教と、南米への奴隷労働者の連行によって、人口が激減しました。
キリスト教への改宗が進む中で、古い信仰と結びついた木の板は、焼かれたり、日用品に転用されたりして、次々と失われていったとされています。
さらに、ロンゴロンゴを読むことができた人々自身も、疫病や強制労働によって大きく数を減らしてしまいました。
1880年代に研究者が島民に文字の意味を尋ねたときには、すでに正しく読める人がほとんど残っていなかったといわれています。
解読に挑んだ人々
これまで、多くの言語学者や考古学者がロンゴロンゴの解読に挑んできました。
中には、板の一部について「暦を記録したものではないか」といった具体的な解釈を提示した研究者もいます。
しかし、こうした説の多くは、他の研究者による検証に耐えられず、広く認められた解読には至っていません。
コンピューターを使った統計的な解析も試みられていますが、それでも文章としての意味を確定させるには至っていないのが現状です。
ロンゴロンゴとオカルト的な魅力
ロンゴロンゴの不気味さは、モアイ像という有名な遺跡を持つ島に、もう一つの未解読の謎が眠っているという点にあります。
文字を読めた人々がほぼ完全に姿を消してしまったことで、その真意は永遠に確認できないかもしれません。
そこに書かれているのが神話なのか、系図なのか、あるいは全く別の何かなのか。
答えの出ない問いを前にすると、島に残された文字がまるで語りかけてくるかのように感じられます。
まとめ
ロンゴロンゴ文字とは、イースター島に残された、木の板に刻まれた未解読の記号群です。
逆ブストロフェドンという珍しい書字方式で刻まれていますが、その意味は今もはっきりとは分かっていません。
資料の少なさと、読み手であった島民の急激な減少が、解読を困難にした大きな要因と考えられています。
モアイ像と並ぶイースター島の謎として、ロンゴロンゴはこれからも研究者たちの関心を集め続けるはずです。
参考・出典
Britannica “rongorongo”
UNESCO Memory of the World “Rongorongo script”
国立国会図書館デジタルコレクション オセアニア民族誌関連資料

コメント